論文を書くにあたって(1)

 

卒論・修論・投稿論文などを書くにあたってのヒントを示して有ります。

より詳細にはもっといろいろと書いてあるサイトがあるので、リンク集を見てください。ここにあるのは落合の私見であり、他の人と必ずしも一致するとは限りませんので、ご承知置きを。

 

このページには、

イントロダクションを書くにあたって

参考文献について

が、書いてあります。

 

イントロダクションを書くにあたって

イントロダクションは、自分の研究がなぜ行われているかを明らかにするものです。研究は全て”何か新しいもの”を含まなければいけないので、何が新しいのかを最低限示す必要があります。そのためには周辺の研究を把握し、読者が著者の研究が新しいものであることを納得させる程度に記述しなくてはいけません。この様な性質上、イントロの最初を「高分子とは・・・・」などという教科書の最初の方のコピーから始めるのは紙とインクと労力の無駄です。

次に、「その新しい発見をすることがなぜ必要なのか」が必要です (一般には)。つまり「Aという発見があるとBという利点がある」というのが正しい論理で、「Aについては検討例があるが、Bについてはまだ検討されていないので、Bを行った」というのは動機として弱く、少なくとも工学系では意味がない。ただし、新しい基礎的な発見が他の人によって新しい応用へと展開されることもよくある。

これらは論文などの発表に必要な要件として新規性進歩性とよばれます(特許の場合はあと実現可能性があるが、論文の場合には結果を示しているので関係ない)。

これを踏まえて、次に典型的なイントロの構成の例を書きます。

例:二酸化炭素を使った新しい合成を見出した研究の場合

「二酸化炭素は豊富に存在し、安価な非石油由来の炭素源であるため、これを利用することは意義深い」

最小限の前提

「しかし、反応性が低く、利用例は少ない」

問題提起

「この為に様々な工夫をして、過去にこういう研究が行われてきた」

過去の事例の紹介

「さらに、これが出来ると、既存のものよりも○○のような進歩性がある」

新規性と進歩性の明記

「そこで二酸化炭素を用いた合成を行って、新しい発見を得たので述べる」

具体的な改善点、時にその発見の将来の研究への寄与も含む

 

研究内容によって、多少前後させた方がよいこともありますが、以上の流れは一般に読みやすいと言えます(例えば、最重要点である研究の進歩性を トップに持ってくるのも多い)。前提の量は対象の読者によって大きく左右されます。

また、主観的な評価を述べるのは出来るだけ避け、客観的事実(データの比較など)から差を指摘するのがよい差別化の方法です。ただし、他人の仕事をけなすのはよくない。

 

余談ですが、上記の前提より、論文のタイトルに"Novel", "New"などを入れないことが一般的になりつつあります(不要であるし、時に誤っているとのこと)。入れないと落ち着かない感じもしますが、入れるなと 言われると、全ての論文の必要条件ですからごもっともです。

 

参考文献の書き方

参考文献をバラバラな書式で書いてくる人がよくいます。必ず一つの書式に統一しましょう。以下に典型的な例としてアメリカ化学会(ACS)の参考文献の表記法を書いておきます。

原著論文

 Ochiai, B.; Tomita, I.; Endo, T. Macromolecules, 1999, 32, 238-240.

 Ochiai, B.; Tomita, I.; Endo, T. Chem. Lett. 1998, 563-564.

 必須事項は、著者名、雑誌名、発行年、巻号(volume)、ページ。 numberは一般に不要。1998年当時はChem. Lett.にVolumeはなかったので、この場合Volumeは書いていません(今は付いています)。

 名前は、「名字」+「カンマ」+「スペース」+「名前の頭文字」+「ピリオド」+「セミコロン」+「スペース」で次の人へ。最後はピリオドの あとにスペースで雑誌名へ。

 雑誌名はそれぞれ省略名があるので調べてください。化学系雑誌でChemical Abstractにおさめられている論文は、CAplus Core Journal Coverage Listにあります。例として、MacromoleculesやNatureなど一語の雑誌は略しません(従ってピリオド は不要)。それぞれの最初の文字は大文字です(Chem. lett.ではない)。

 ACSでは、発行年を太字、巻(volume)をイタリック(斜体)、ページは普通の書体で書きます。

 ちなみに idem, ibid と書いてあるのがありますが(最近少ないけど)、これは辞書をきちんと引いて調べましょう。

 

図書

 Leonard, J. In Polymer Handbook 4th Edition; Brandrup, J.; Immergut, E. H.; Grulke, E. A. Eds., Wiley, New York, 1999, pp II-363-393.

 図書の場合は、「著者」「In 書名」「編集者(複数ならEds、一人ならEdを最後に付ける)」「出版社」「発行(出版社の)都市」「発刊年」「ページ」の順になります。

日本語で書くなら、例えば以下のような書式があります。
 落合文吾, 遠藤剛, 冨田育義, 「反応性高分子の新展開」, シーエムシー出版, 遠藤剛監修, 181-190 (2005).

 

その他の学会誌などでの書式

日本化学会など

 B. Ochiai, I. Tomita, and T. Endo, Macromolecules, 32, 238-240 (1999).

英国化学会など

 B. Ochiai, I. Tomita, and T. Endo, Macromolecules, 1999, 32, 238-240.

この他、論文を投稿する際は、各雑誌のAuthor Guidelineに沿った書き方をしましょう。

 

また、本文に「○○であることが知られている(報告されている)」などと書いたら、基本的には参考文献をつけなくてはいけません。

 

 

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