論文を書くにあたって(2−2)

 

このページでは実験項の書き方について書きます。

 

データの書き方については前ページを参照してください。

 

前のページにも書きましたが、実験項は、読者が同じように実験した場合に 同じ結果が得られるように書くことが重要です。したがって、出来るだけ省略せずに書くことを心がけましょう。また、実験は既に終了 したことを述べるので、過去形で表記します。

有効数字にも気を付けなくてはいけません。原料となる試薬の重量やモル数は少なくとも有効数字3桁と しましょう。そうしないと収率の有効数字もこれに合わせたもの(もしくはそれよりさらに一桁少ないもの)になってしまいます。溶媒量なども 出来るだけ有効数字2桁以上とするべきです。

また、ポリマーの場合、GPCで求めた分子量は計算範囲によって大きくずれることが多いので、少なくとも10の位で四捨五入するのが基本です。分子量が数百しかない場合は10の位まで書いてしまいますが・・・・・

以下に典型的な実験項の例を示します。

三方コックを付けた試験管に、A(224 mg, 1.00 mmol)、B(1.2 mg, 1.0 μmol)およびジクロロメタン(2.0 mL)を窒素雰囲気下で加えた。この反応液を60℃で2時間撹拌し、Aの完全な消費をガスクロマトグラフィーで確認した後、Bに対して約10当量のメタノールを加えた。得られた溶液を100mLのメタノールに注ぎ、得られた沈殿をろ過および乾燥することで、ポリAを得た(112 mg、 収率50%)。

1H NMR (..........

 ポイントは

(1)測った値(この場合重さ)とモル数の有効数字が等しい

(2)全て過去形で書かれている

(3)試薬の量が具体的に示されている

(4)それぞれの手法が具体的に示されている

 

 ちなみに再沈は正式な用語ではないので、実験項に使ってはいけません。沈殿精製ならOK。再沈殿は厳密には、沈殿した物質を再び溶解させてから貧溶媒に注いで再び沈殿させること、を指します。もちろん再沈殿をした場合に再沈殿と書くのはOK。また、有効数字については加減算があると桁落ちの可能性もありますが、とりあえずは例外と言うことで。

 

 

 用いた測定機器と測定条件も実験項に必須です。特にGPCの場合は、カラム・溶離液・温度・標準サンプル(THF、DMF、クロロホルム等ならポリスチレンが多い)・流速・検出器など重要な項目が数多くあります。

 また、溶媒など精製したものを用いたのであれば、精製法についてもまとめて示すべきです。
例えば、
ジクロロメタンは水素化カルシウムで乾燥し、そのまま窒素雰囲気下で蒸留した。1,4-ジオキサンはナトリウムで乾燥し、そのまま窒素雰囲気下で蒸留した。N,N-ジメチルホルムアミドは水素化カルシウムで乾燥し、減圧蒸留した。1,6-ヘキサンジアミンは減圧下で昇華させたものを用いた。
こんな感じです。

 

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